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仮想通貨(暗号資産)の相続税・所得税をざっくり説明

仮想通貨(暗号資産)の現物取引にかかる相続税・所得税の概要

<仮想通貨(暗号資産)にかかる相続税>
・相続の日の終値(売却可能価額、すなわち仮想通貨を円に換金する価格)で評価した価額が相続財産となる。
・2020年頃以降は、日本国内の仮想通貨交換業者において、相続の手続きを行うと、残高証明書に日本円換算額が記載されている模様で、その価格を用いればよい。
・被相続人が取引していた仮想通貨交換業者が複数ある場合には、その一つの価格を選択して計算してもよい。
・相続の日の価額が明らかでない場合には、仮想通貨の取引価格などを広く提供するデータプロバイダーが公表している価格も、実務上、容認されている模様。そのようなデータプロバイダーの例としては、CoinMarketCap(https://coinmarketcap.com/ja/coins/)が上げられる。

<仮想通貨(暗号資産)の売却にかかる所得税>
譲渡価額から取得価額を差し引いて計算される所得に対して、次のとおり課税される。
・所得区分は、雑所得。
・取得価額の計算方法は、総平均法or移動平均法(届出書の提出がない場合は、総平均法)
・取得価額につき、売却価額の5%相当額を取得費とすることが認められるようになった(2019年売却分より)。
・贈与、相続により取得した仮想通貨(暗号資産)の取得価額は、贈与、相続時の価額となる(2019年売却分より)。不動産や株式の場合、取得価額は被相続人の取得価額を引継ぐ。取得価額が、贈与、相続時の価額に置き換わるというのは、不動産、株式とは全く違う概念。

<仮想通貨(暗号資産)の相続手続による換金>
・日本国内の仮想通貨交換業者においては、最近、相続手続きを行うと、相続の日のレートで日本円に換金されて相続人の口座に振り込まれることが多い模様(但し、相場が大きく変動した場合でも当該取扱いがなされているかは不明)。
・この換金にかかる所得計算において、取得価額は前述のように相続時の価額となるので、通常は、雑所得が生じないと思われる。

参考)
国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
暗号資産に関する税務上の取扱い及び計算書について
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm

配当所得を総合課税にすべきか

(概要)
・課税所得が小さい場合には、配当所得を総合課税にすることにより、源泉されたときの税率より低い税率が適用できたり配当控除を適用することによって、分離課税より有利になる傾向がある。
・どちらか有利かは簡単には判定できないため、確定申告作成時には、証券会社等からの取引報告書を踏まえて、総合課税と分離課税それぞれの場合について所得税・住民税を試算・比較することをお薦めしたい。

(詳細)
● 前提
・扶養する配偶者がいると仮定。
・金融商品の運用は、上場株式の売買と配当受領のみを行っていると仮定。
・証券口座は、特定口座一つと仮定。
・配当所得にかかる申告方法(分離、総合)は、所得税と住民税とで同じ方法を採用すると仮定。
・譲渡損失が発生してこれを翌年度以降に繰り越す場合、分離課税を選択することにより、通算する配当額だけ損失繰越額が減少するが、翌年以降に譲渡益が発生するとは限らないため、この影響は無視する。

● 具体的な場合分け
・ 上場株式について配当を上回る譲渡損失が出ている場合、所得の金額にかかわりなく、譲渡損失の繰越を選択し、かつ、分離課税にする方が有利である。なぜならば、分離課税のままであれば譲渡損失と配当は通算され配当に対して実質的に税金は課されないが、総合課税にした場合には配当に対して所得税及び住民税が課されるためである。なお、総合課税時、配当控除という所得控除があるが、配当に対する合計税率(所得税+住民税)は、総合課税時の配当控除の合計税率(所得税+住民税)より常に高く、配当に対して税金が課されることに変わりがない。

・ 上場株式について譲渡損失が出ていない場合、配当所得やそれ以外の所得の金額、各種所得控除の金額によって、どちらが有利かが決まる。一般的には、合計所得が小さく配偶者控除への影響が乏しく、さらに、適用される所得税率が小さければ、総合課税が有利となる(下図)。