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地域金融機関の競争力の維持のために

普段感じていることを書き止めてみました。本投稿は予告なく削除改変することがあります。

〇 他の金融機関と比較して、地域金融機関に今なお競争力があるのは、顧客層が地理的に集中していることを活かして取引コストを低く抑え、小口の事業融資先に対しても相応に低い金利で融資機能を提供している点にあると思われる。
〇 しかし、情報技術の進展などにより他金融機関から地域へのアクセスコストは下がっており、加えて、地方から産業・人口が流出する傾向にあり、その優位性は相対的に低下している。
〇 こうした中、地域金融機関が競争力を維持するためには、情報技術の活用などにより、より広範囲の地域をより低いコストでカバーできる融資の生産性向上が必要ではないか。

(例)
・SNSやビデオ会議システムを通じたリレーションシップによる訪問コストの削減。
※ コロナ禍においても、他業界と比較すると対外的業務への適用が遅れている印象。

・クラウド型会計データへの直接アクセスにより、コミュニケーションコストを削減しつつ、リアルタイムでの深度あるモニタリングの実施。
※ 紙やFAXの試算表からの脱却。
※ 会計データに直接アクセスすることで、多様な切り口でのモニタリングの出発点に。
※ 将来的には、AI等による融資審査に組み込んでいくことの足掛かりにもなる。
※ 尚、会計データ自体の適時性を確保するためには、APIを通じた会計システムへの入出金データの提供が欠かせない。こうした中、API利用にあたっては、事業者によるセキュリティ認証を定期的(現在、30日~100日が大半)に求めているが、管理業務に十分な時間の取れない小口の事業者でもその利用を容易にするため認証間隔を広げる必要があると思料(理想的には400日程度)。

・納税・振込の電子化の推進による営業担当者の集金コストの廃止
※ その前提として、決済の効率化についてのメリットを融資担当者から事業者に伝える必要。なお、今後、ZEDI一般利用型CDBCの活用推進に地域金融機関が遅れをとった場合、地域金融機関の預金が有する預金通貨としての価値が下がる恐れがある可能性。
※ コロナ禍によって電子マネーの導入が進んだ地域があるが、地域金融機関の関与は限定的であった。

〇 ところで、地域金融機関は、地域商社や様々なサービス仲介の役割も期待されているところであるものの、提供される情報やサービスに対して十分な対価を支払える事業者は限定的であり、競争力維持に対して限定的な効果と思料。

弥生PAPカンファレンス 2018 夏に参加してきました。

<概要>
・中小企業と会計事務所は、各社から次々と提供される廉価あるいは無料のITサービスを利用して、業務を効率化していくことができる。
・仕訳データを活用した法人融資審査業務を提供するアルトア(株)と地域金融機関との提携は、地域金融機関における法人融資審査を進化させる可能性を秘めている。


(弊事務所事例発表)

<詳細>
2018年7月4日、弥生PAPカンファレンス 2018 夏の名古屋会場に参加してきました。
事例発表では、弊事務所からも、弥生会計を活用した経理業務の効率化事例を発表させて頂きましたが、二組目の登壇者である税理士法人葵パートナーズ様の発表、また、弥生(株)の子会社であるアルトア(株)の発表は、とても刺激的な内容でした。

税理士法人葵パートナーズ様の発表では、各社から次々と提供される廉価あるいは無料のITサービス(chatworkslackfacebookメッセンジャーgoogleドライブgoogleスプレッドシートkintoneクラウドサイン)を駆使して、会計業務の効率化、雇用体系の多様化を図り、そこで生み出される時間を活かし、地域の枠を超えて高付加価値を提供する会計事務所の在り方を、勉強させていただきました。

また、アルトア(株)の発表では、仕訳データを活用してAI即時自動審査を行っている法人融資サービスにつき、平成29年12月に自社で開始した現状が報告されました。同社では、地域金融機関(千葉銀行、福岡銀行、山口フィナンシャルグループ、横浜銀行)と業務提携しており、将来的に、地域金融機関での同機能の活用を目指されています。決算情報を基にした単なるスコアリングではなく、仕訳一本一本を分析して、人による融資審査に近づけようとするシステムの導入は、融資担当者をできる限り定量的な分析から解放し定性的評価に集中できるという意味で、法人融資の効率化と深化を推進していくものと思われます。

弊事務所としても、適切な納税義務の実現や金融の円滑化に役立つ会計サービスを、効率的にお客様にご提供できるよう、業務プロセスの不断の見直しを図っていきたいと思います。

(公式サイトへのリンク:https://www.yayoi-kk.co.jp/pap/report/conference-2018/summer.html

役員借入金を免除させるのではなく、役員借入金を返済させていく方がお得?

<要旨>
・経営改善計画等において、財政状態の改善あるいは経営責任の履行のために、役員借入金の免除(放棄)を受けることがあるが、DIP(経営者が継続関与する)タイプの計画においては、役員借入金の免除を受けず、役員報酬の支給の代わりに役員借入金を返済することにした方が、金融機関にとっても経済合理性が高い場合がある。

<詳細>
経営改善等計画の立案時においては、財政状態の改善あるいは経営責任の履行のために、役員借入金の免除(役員から会社への貸付金の放棄)を計画することがある。
このとき、多額の役員借入金の免除であっても、税務上の繰越欠損金(法的整理あるいはそれに準ずる場合には、期限期限切れ欠損金を含む)が十分にある場合には、法人のタックスプランニングに影響を与えないことをもって税務上のリスクがないと判断することが多いと思う。
しかし、その後の社会保険料や役員個人に課される所得税等を考慮すると、その判断は今一度検討したいところである。
なぜなら、計画期間中の役員に対する支出を最低限に抑える計画の場合、手取りを基準に計算することになるが、役員借入金の返済と異なり、役員報酬として支払う場合には、当該報酬に対する社会保険料や所得税を上乗せして報酬額を計算する必要があるからである。他方、役員借入金の返済として支出するのであれば、原則として、社会保険料及び個人に対する所得税は発生しないことになる。
特に、前稿「経営における社会保険料認識の重要性」に記したように法人に対する社会保険の加入を当然の前提にすべきことになった昨今においては、報酬額面の約30%にも上る社会保険料の負担は無視できないであろう。
計画期間中の無計画な資金流出を防ぐためにも、計画立案時に、役員報酬の支給の代わりに役員借入金を返済することとするか、経営者と金融機関とのコミュニケーションを深めて頂くよう、私どもとしても提案して参りたい。

 

『捨てられる銀行』を浜松にて読む その2


<本投稿の要約>

・『捨てられる銀行』では、子会社のサービサーに20代の行員を毎年送りこんでいる地域銀行が紹介されている。

・事業再生への取組み経験を、金融機関の標準的なキャリアプランに入れることは、有用と思われる。

<詳細>

前回の投稿で、様々な示唆に富むと、橋本卓典『捨てられる銀行』(2016年講談社、以下「前掲書」と記す)を紹介しましたが、勉強になった点を追加で書いていきたいと思います。

前回は、地域の中核企業と協力する広島銀行に触れさせていただきましたが、今回は、その子会社の「しまなみサービサー」(しまなみ債権回収株式会社)に関してです。サービサーというのは、経営が困難になった先の債権を銀行から切り離して、回収・管理する機関のことを一般的に指しますが、このしまなみサービサーでは、銀行から「単に債権を売却して終わりという一方通行の関係ではない。可能な場合には、金融機関が再び融資できる状態まで事業再生を手掛けるノウハウと体制を整えている」(前掲書90頁)とされています。この点は昨今のサービサーでは既に珍しくないのかもしれませんが、設立後、「十数年を経過しても20代の行員が毎年送り込まれている。平均年齢は40台前半」(前掲書91頁)という点は、「多くのサービサーは定年後の行員の出向先となっている」(前掲書91頁)中では、「異例」でしょう。

では、なぜ、このようなことができるかというと、同書では、「若い行員が債権回収だけでなく、事業再生という経験を積んで、銀行に戻っていく。この流れが投資銀行ビジネスの強化につながる好循環をもたらしていくことになる」(前掲書91頁)からだとしています。

しかし、事業再生の経験は、投資銀行ビジネスの強化につながるだけではないはずで、例えば、信用保証制度や金検マニュアル偏重によって喪失したと同書がいうところの融資の「目利き力」を鍛えるからこそ、人事戦略上重視すべきなのだと思います。

例えば、現在、「事業性評価」に基づく融資等の促進が求められています(参考:金融庁パンフレット「円滑な資金供給の促進に向けて」)が、企業訪問や経営相談等を通じて、事業の内容や成長可能性から融資を判断するということは、反面で、同種の情報から、融資しない判断も下せるということでもあり、それは、回収できなかった先を、不可抗力ともいえる外部環境の変化によるものか、そうでないといえる部分もあったのか等、深く知ることではじめて可能になると思われるからです。

また、成長力のある企業も、外部環境の変化によって、一時的な苦境に立たされるときもあると思います。そうした時に、事業再生におけるノウハウと経験が活きるとすれば、事業性のある事業者とのリレーションを深めることができ、それは、営業力の向上につながるとも言えるのではないでしょうか。

事業性のある事業者を育てる地域金融がより促進されることを祈っています。

 

 

『捨てられる銀行』を浜松にて読む その1

<本投稿の要約>

・地域金融機関は、直接融資を行っていなくとも、地域の中核企業とコミュニケーションを取ることが重要ではないか。

・地域金融機関がコミュニケーションを深める手法の一つとして、当該企業の株式の取得は考えられないか。

・地域金融機関のそうしたコミュニケーションが、当該企業の長期的成長のシグナルと考えられる場合には、当該投資について機関投資家と地域金融機関が協力する余地はないか。

<詳細>

少し前に話題となった、橋本卓典『捨てられる銀行』(2016年講談社、以下「前掲書」と記す)を遅まきながら読ませていただきました。いろいろ示唆に富む書かと思いますが、まず、勉強になったのが、地域金融機関と地域の中核企業との協力です。

金融庁「金融仲介の改善に向けた検討会議」に関連して広島銀行の取組みを紹介していますが、「広島銀行はマツダと連携し、的確な『処方箋』を与えることができるようになった。」(前掲書48頁)とあります。つまり、「マツダにとって代替のきかない技術をもったサプライヤーであるならば、たとえ財務内容が厳しくても、経営再建まで踏み込んで必ず支えなければならない」ことから、広島銀行は、マツダと連携し、「対象企業を『技術』と『財務』の両面の優劣で評価する」ことができるようにしたとのことです。

融資先を、技術と財務の両面で優劣を単に評価するだけでなく、その取引先の地域的中核である「マツダと連携」するという点は、地域活性化に対する同行の本気を感じるとともに、実際に当事者及び地域の長期的成長にとって有益と考えられます。

これを浜松に置き換えて考えると、自動車産業だけでなく、光関連などの製造業の分野で応用も可能かもしれません。

ただし、「代替のきかない技術」かどうかを峻別するような企業秘密にかかわる情報を、どうやってそうした中核企業から引き出すか、そこは課題かもしれません。もし直接の融資取引がない先だとしたら、なおさらです。

それに対しては、地域金融機関は、当該企業の株式の一部に投資し、中核企業との関係をより強固なものとし協力を得ていくという解決があるかもしれません。

また、もし預金取扱金融機関だけで、株式に直接投資することに懸念があるということであれば、当該地域外の機関投資家と協力するということも考えられます。なぜなら、地域金融機関のそうしたコミュニケーションが、当該企業の長期的成長のシグナルと考えられる場合には、機関投資家にとっても、新たな収益機会と考えられるからです。

各地の地域金融機関と中核企業が協力して、地域経済を活性化していくことを願っています。