<本投稿の要約>
・地域金融機関は、直接融資を行っていなくとも、地域の中核企業とコミュニケーションを取ることが重要ではないか。
・地域金融機関がコミュニケーションを深める手法の一つとして、当該企業の株式の取得は考えられないか。
・地域金融機関のそうしたコミュニケーションが、当該企業の長期的成長のシグナルと考えられる場合には、当該投資について機関投資家と地域金融機関が協力する余地はないか。
<詳細>
少し前に話題となった、橋本卓典『捨てられる銀行』(2016年講談社、以下「前掲書」と記す)を遅まきながら読ませていただきました。いろいろ示唆に富む書かと思いますが、まず、勉強になったのが、地域金融機関と地域の中核企業との協力です。
金融庁「金融仲介の改善に向けた検討会議」に関連して広島銀行の取組みを紹介していますが、「広島銀行はマツダと連携し、的確な『処方箋』を与えることができるようになった。」(前掲書48頁)とあります。つまり、「マツダにとって代替のきかない技術をもったサプライヤーであるならば、たとえ財務内容が厳しくても、経営再建まで踏み込んで必ず支えなければならない」ことから、広島銀行は、マツダと連携し、「対象企業を『技術』と『財務』の両面の優劣で評価する」ことができるようにしたとのことです。
融資先を、技術と財務の両面で優劣を単に評価するだけでなく、その取引先の地域的中核である「マツダと連携」するという点は、地域活性化に対する同行の本気を感じるとともに、実際に当事者及び地域の長期的成長にとって有益と考えられます。
これを浜松に置き換えて考えると、自動車産業だけでなく、光関連などの製造業の分野で応用も可能かもしれません。
ただし、「代替のきかない技術」かどうかを峻別するような企業秘密にかかわる情報を、どうやってそうした中核企業から引き出すか、そこは課題かもしれません。もし直接の融資取引がない先だとしたら、なおさらです。
それに対しては、地域金融機関は、当該企業の株式の一部に投資し、中核企業との関係をより強固なものとし協力を得ていくという解決があるかもしれません。
また、もし預金取扱金融機関だけで、株式に直接投資することに懸念があるということであれば、当該地域外の機関投資家と協力するということも考えられます。なぜなら、地域金融機関のそうしたコミュニケーションが、当該企業の長期的成長のシグナルと考えられる場合には、機関投資家にとっても、新たな収益機会と考えられるからです。
各地の地域金融機関と中核企業が協力して、地域経済を活性化していくことを願っています。