法人の税金」カテゴリーアーカイブ

(番外編)電子帳簿保存法対応の勘所

あくまで一例ですが、電子帳簿保存法対応の方向性の例を記してみます。

1 電子取引にかかる取引データは、タイムスタンプ機能がなくとも、既存の基幹システムもしくは会計システムに取り込んでいく。

∵ 現状、ファイルサーバーの共有フォルダへの保存を行っている企業も多いと思われるが、検索性要件を満たすための事務コストが相応に必要となる。このため、検索性要件を容易に満たすためには、専用の文書保管システムを導入するか、既存のシステムに取り込むかが、選択肢となる。このうち、既存のシステムとの連携の方が、生産性向上につながりやすいことが多い。
なお、既存のシステムにタイムスタンプ機能を付与できない場合の真実性の要件を満たす手段としては、規則の制定・運用が考えられる。

2 紙文書のスキャンは、経費精算クラウドなどを活用する場合を除き、極力行わない。紙の文書は、そのまま保存するか、取引における紙文書のやりとりをなくし電子取引への移行をすすめていく。

∵ 紙のスキャンは、真実性の要件を満たすために、タイムスタンプ機能の実装が必須となる。タイムスタンプ機能の実装のためには、専用の文書保管システムを必要とすることも多い。また、スキャンする事務自体が必要となり事務コストが増す。

電子帳簿保存法対応を契機として、企業の生産性の向上につながることを願っております。

ソフトウエア開発における会計処理と税務の図解

ソフトウエア開発にかかる税務は、令和3年税制改正により税務上の取扱いが明確になった面がある。
ただし、難解な側面があることから、ソフトウエアの目的別及び開発段階別に会計処理及び税務を図示する。
なお、一般的な例を示したものであり、実務への適用にあたっては、顧問の税理士と協議の上、処理願いたい。

参考
国税庁 令和3年6月25日付課法2-21ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/210625/

経済産業省 「研究開発税制の概要と令和3年度税制改正について」35頁
https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/tax/R4gaiyov2.pdf

修正申告における事業税の認容額

修正申告の事業年度が複数年にわたるとき、事業年度の修正申告にかかる事業税を翌年の法人税修正申告で損金算入することができる。この損金算入額は、納税者が自発的に修正申告を行った場合、実際の事業税追徴税額であるが、税務調査などの結果、更正通知を受けて修正申告を提出する場合、税務署側が標準税率で計算した金額となる。では、その標準税率での計算方法はどのようなものであろうか。それをエクセルの数式で表すと、次のように計算される。事業税申告上の超過税率適用法人にも標準税率を用いることはもちろん、用いる所得は、事業税申告で実際に用いる所得ではなく、別表四の所得金額が用いられること、付加価値割の影響額算出に際しても実際の付加価値割を考慮せず前述の所得金額のみを利用して計算することに留意する。

外形標準課税対象法人の場合(※)
rounddown(rounddown(R’,-3)*(a+b),-2)+rounddown(rounddown(R’,-3)*a*c,-2)
-rounddown(rounddown(R,-3)*(a+b),-2)-rounddown(rounddown(R,-3)*a*c,-2)

外形標準課税対象法人以外の所得課税法人の場合
rounddown(rounddown(R’,-3)*a,-2)+rounddown(rounddown(R’,-3)*a*c,-2)
-(rounddown(rounddown(R,-3)*a,-2)-rounddown(rounddown(R,-3)*a*c,-2)

ただし、次のとおりとする。
R … 直前事業年度における当初申告における所得金額(別表四 最終行)
R’… 直前事業年度における修正申告における所得金額(別表四 最終行)
a … 事業税所得割の標準税率
b … 事業税付加価値割の標準税率
c … 特別法人事業税の標準税率

※ 端数切捨てのタイミングは、名古屋国税局管内で用いられていると思われる方法を記載した。この場合、県宛の事業税申告書における端数処理のタイミングと異なる。

関連の通達 法人税法基本通達9-5-2

エストニア企業へのソフトウエア開発外注に係る源泉所得税は不要もしくは5%に軽減?

●概要
海外の企業に対してソフトウエア開発を外注する場合、著作権の使用許諾や譲渡が行われていると認められるときなどに、外注費の支払いにおいて20.42%の源泉所得税を控除しなければらないことがある。そのときでも、エストニア企業に外注する場合には、租税条約によって5%に軽減されるか免除となる可能性が高い。

なお、本稿は、研究を目的に掲載するもので、実務上の適用にあたっては、顧問の弁護士や税理士にご相談ください。また、本稿では、エストニア政府の課す税金については議論の対象外としています。

●詳細
(前提)
エストニアは、国家サービスのデジタル化において先進的な取組みが行われており、IT先進国として知られている。
では、エストニアに所在する法人又は個人(以下、外注先)に対して、ソフトウエアの開発を日本企業(以下、委託者)が外注する場合、委託者は外注費等の支払いに際して、どのような日本国での税務が必要となるのであろうか。

検討を容易にするため、次の場合を検討する。
事例① 委託者は、外注先の保持する著作権の使用許諾を受けて、納品データを日本国内で使用や複製する。
事例② 委託者は、納品データとともに、外注先から著作権の譲渡を受ける。
事例③ 納品データに著作性はなく、外注に際して著作権の譲渡を伴わない。
事例④ 委託者は、個人の外注先を従業員(非役員)として雇用し、エストニアにおいて勤務する(なお、このとき著作権は職務著作として委託者に原始的に帰属するものとする)。

外注先は、日本に支店や代理人を有していないものとする。また、外注先は、委託された作業を、エストニア国内においてのみ行い、データのみを通じて納品するものとする。

(結論)
1 (日本国の)源泉所得税:
事例① 5%に軽減 (なお、租税条約に関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり(注1))
事例② 免税 (なお、租税条約の関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり(注1))
事例③ 源泉徴収不要
事例④ 源泉徴収不要(なお、両国での社会保険、労働保険、労働法等の適用について別途検討を要することに留意)
2 (日本国の)消費税:
不課税

(理由)
1 源泉所得税
① まず、日本国の所得税法をみると、著作権使用料の源泉地判定について、使用地主義が採用されており、本件の源泉地は日本国内となるため、20.42%の源泉徴収必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)。そのうえで、日エストニア租税条約をみるに、使用料の源泉地の判定について債務者主義を取る(日エストニア租税条約第12条第5項)ため源泉地は日本国内となるが、使用料に課すことができる税率は5%が上限である(日エストニア租税条約第12条第2項)。
② まず、日本国の所得税法をみると、著作権の譲渡対価の源泉地判定について、使用地主義が採用されており、本件の源泉地は日本国内となるため、20.42%の源泉徴収が必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)。そのうえで、日エストニア租税条約をみるに、著作権の譲渡については、資産の譲渡として解釈でき、譲渡者の居住地国のみで課税できることから、日本国では免税となる(日波租税条約第13条第5項)。
③ 所得税法第161条第1項第6号及び第12号に国内源泉所得として規定されている人的役務提供事業及び人的役務提供の対価は、国内に所在して役務提供を行うことを前提としている。したがって、日本国の所得税法において、本件役務提供は、国内源泉所得に該当しない。
④ 日本国の所得税法では、役員でない従業員の海外勤務について国内源泉所得としておらず、源泉所得税を課していない(所得税法第161条第1項第12号イ)。

注1 実務上届出書を提出するが、届出書の提出は効力要件ではなく「提出がなければ軽減免除がされないということにはならない」(牧野好孝『事例でわかる国際源泉課税第3版』税務研究会出版局、2020年)という考え方が有力である(東京地裁平成27年5月28日判決も同趣旨。)。

2 消費税
①〜③ 消費税法上の資産の譲渡等に該当するが、外国において役務提供が行われるため、国外取引として不課税
④ 消費税法上の資産の譲渡等に該当するが、雇用契約に基づく労働であり、「事業」として行っていないため不課税。

(参考文献)
東京国税不服審判所次席国税審判官 小島 俊朗「プログラム開発を海外に委託する場合の手数料への課税とその所得区分について」『税大ジャーナル 8 2008. 6』

所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエストニア共和国との間の条約

ポーランド企業へのソフトウエア開発外注に係る源泉所得税は不要?

●概要
海外の企業に対してソフトウエア開発を外注する場合、著作権の使用許諾や譲渡が行われていると認められるときなどに、外注費の支払いにおいて20.42%の源泉所得税を控除しなければらないことがある。そのときでも、ポーランド企業に外注する場合には、免除となる可能性が高い。

なお、本稿は、研究を目的に掲載するもので、実務上の適用にあたっては、顧問の弁護士や税理士にご相談ください。また、本稿では、ポーランド政府の課す税金については議論の対象外としています。

●詳細
(前提)
ポーランドは、世界的なIT企業などにより積極的に投資が行われており、IT人材が豊富とも言われる(参考記事)。
では、ポーランドに所在する法人又は個人(以下、外注先)に対して、ソフトウエアの開発を日本企業(以下、委託者)が外注する場合、委託者は外注費の支払いに際して、どのような日本国での税務が必要となるのであろうか。

検討を容易にするため、次の場合を検討する。
事例① 委託者は、外注先の保持する著作権の使用許諾を受けて、納品データを日本国内で使用や複製する。
事例② 委託者は、納品データとともに、外注先から著作権の譲渡を受ける。
事例③ 納品データに著作性はなく、外注に際して著作権の譲渡を伴わない。
事例④ 委託者は、個人の外注先を従業員(非役員)として雇用し、ポーランドにおいて勤務する(なお、このとき著作権は職務著作として委託者に原始的に帰属するものとする)。

外注先は、日本に支店や代理人を有していないものとする。また、外注先は、委託された作業を、ポーランド国内においてのみ行い、データのみを通じて納品するものとする。

(結論)
1 (日本国の)源泉所得税:
事例① 免税 (なお、租税条約に関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり(注1))
事例② 免税 (なお、租税条約の関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり(注1))
事例③ 源泉徴収不要
事例④ 源泉徴収不要(なお、両国での社会保険、労働保険、労働法等の適用について別途検討を要することに留意)
2 (日本国の)消費税:
不課税

(理由)
1 源泉所得税
① まず、日本国の所得税法をみると、著作権使用料の源泉地判定について、使用地主義が採用されており、本件の源泉地は日本国内となるため、20.42%の源泉徴収必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)。そのうえで、日波租税条約をみるに、使用料の源泉地の判定について債務者主義を取る(日波租税条約第12条第5項)ため源泉地は日本国内となるが、文化的使用料として免税である(日波租税条約第12条第2項(b))。
② まず、日本国の所得税法をみると、著作権の譲渡対価の源泉地判定について、使用地主義が採用されており、本件の源泉地は日本国内となるため、20.42%の源泉徴収が必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)。そのうえで、日波租税条約をみるに、著作権の譲渡については、資産の譲渡として解釈でき、譲渡者の居住地国のみで課税できることから、日本国では免税となる(日波租税条約第13条第4項)。
③ 所得税法第161条第1項第6号及び第12号に国内源泉所得として規定されている人的役務提供事業及び人的役務提供の対価は、国内に所在して役務提供を行うことを前提としている。したがって、日本国の所得税法において、本件役務提供は、国内源泉所得に該当しない。
④ 日本国の所得税法では、役員でない従業員の海外勤務について国内源泉所得としておらず、源泉所得税を課していない(所得税法第161条第1項第12号イ)

注1 実務上届出書を提出するが、届出書の提出は効力要件ではなく「提出がなければ軽減免除がされないということにはならない」(牧野好孝『事例でわかる国際源泉課税第3版』税務研究会出版局、2020年)という考え方が有力である(東京地裁平成27年5月28日判決も同趣旨。)。

2 消費税
①〜③ 消費税法上の資産の譲渡等に該当するが、外国において役務提供が行われるため、国外取引として不課税
④ 消費税法上の資産の譲渡等に該当しない。

(参考文献)
東京国税不服審判所次席国税審判官 小島 俊朗「プログラム開発を海外に委託する場合の手数料への課税とその所得区分について」『税大ジャーナル 8 2008. 6』

「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」及び「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とポーランド人民共和国との間の条約」に係る統合条文

ウクライナ企業へのソフトウエア開発外注に係る源泉所得税は不要?

●概要
海外の企業に対してソフトウエア開発を外注する場合、著作権の使用許諾や譲渡が行われていると認められるときなどに、外注費の支払いにおいて源泉所得税を控除しなければらないことがある。そのときでも、ウクライナ企業に外注する場合には、租税条約によって免除となる可能性が高い。

なお、本稿は、研究を目的に掲載するもので、実務上の適用にあたっては、顧問の弁護士や税理士にご相談ください。また、本稿では、ウクライナ政府の課す税金については議論の対象外としています。

●詳細
(前提)
ウクライナは、国家サービスのデジタル化の分野で、世界的にも先進的な取組みを行っている(参考記事)。
では、ウクライナに所在する法人又は個人(以下、外注先)に対して、ソフトウエアの開発を日本企業(以下、委託者)が外注する場合、委託者は外注費の支払いに際して、どのような日本国での税務が必要となるのであろうか。

検討を容易にするため、次の場合を検討する。
事例① 委託者は、外注先の保持する著作権の使用許諾を受けて、納品データを日本国内で使用や複製する。
事例② 委託者は、納品データとともに、外注先から著作権の譲渡を受ける。
事例③ 納品データに著作性はなく、外注に際して著作権の譲渡を伴わない。
事例④ 委託者は、個人の外注先を従業員(非役員)として雇用し、ウクライナにおいて勤務する(なお、このとき著作権は職務著作として委託者に原始的に帰属するものとする)。

外注先は、日本に支店や代理人を有していないものとする。また、外注先は、委託された作業を、ウクライナ国内においてのみ行い、データのみを通じて納品するものとする。

(結論)
1 (日本国の)源泉所得税:
事例① 免税 (租税条約に関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり(注1))
事例② 免税 (租税条約の関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり(注1))
事例③ 源泉徴収不要
事例④ 源泉徴収不要(なお、両国での社会保険、労働保険、労働法等の適用について別途検討を要することに留意)
2 (日本国の)消費税:
不課税

(理由)
1 源泉所得税
① まず、日本国の所得税法をみると、著作権使用料の源泉地判定について、使用地主義が採用されており、本件の源泉地は日本国内となるため、20.42%の源泉徴収必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)。そのうえで、日宇間の租税条約として適用される日ソ租税条約をみるに、使用料の源泉地の判定について債務者主義を取る(日ソ租税条約第9条第4項)ため源泉地は日本国内となるが、文化的使用料として免税である(日ソ租税条約第9条第2項a)。
② まず、日本国の所得税法をみると、著作権の譲渡対価の源泉地判定について、使用地主義が採用されており、本件の源泉地は日本国内となるため、20.42%の源泉徴収が必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)。そのうえで、日宇間の租税条約として適用される日ソ租税条約をみるに、著作権の譲渡については、資産の譲渡として解釈でき、譲渡者の居住地国のみで課税できることから、日本国では免税となる(日ソ租税条約第11条第5項)。
③ 所得税法第161条第1項第6号及び第12号に国内源泉所得として規定されている人的役務提供事業及び人的役務提供の対価は、国内に所在して役務提供を行うことを前提としている。したがって、日本国の所得税法において、本件役務提供は、国内源泉所得に該当しない。
④ 日本国の所得税法では、役員でない従業員の海外勤務について国内源泉所得としておらず、源泉所得税を課していない(所得税法第161条第1項第12号イ)。

注1 実務上届出書を提出するが、届出書の提出は効力要件ではなく「提出がなければ軽減免除がされないということにはならない」(牧野好孝『事例でわかる国際源泉課税第3版』税務研究会出版局、2020年)という考え方が有力である(東京地裁平成27年5月28日判決も同趣旨。https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=85442

2 消費税
①〜③ 消費税法上の資産の譲渡等に該当するが、外国において役務提供が行われるため、国外取引として不課税
④ 消費税法上の資産の譲渡等に該当するが、雇用契約に基づく労働であり、「事業」として行っていないため不課税。

(参考文献)
東京国税不服審判所次席国税審判官 小島 俊朗「プログラム開発を海外に委託する場合の手数料への課税とその所得区分について」『税大ジャーナル 8 2008. 6』https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/backnumber/journal/08/pdf/08_03.pdf

『税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」及び日本国とウクライナの二国間の関係に適用される「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約」に係る統合条文』
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/191018ukraine_j.pdf

インボイス制度をめぐる協力業者(外注先)とのコミュニケーション文書例

2023年10月よりはじまるインボイス制度に備え、小規模な協力業者(外注先)とのコミュニケーションをどう図っていくか迷う事業者も多いと思われます。そこで、小規模な協力業者(外注先)にインボイス制度を伝えるとともに、対応方針をヒアリングするためのコミュニケーションツール例を公開いたします。社内外の関係者や法律専門家、税理士とも十分ご協議のうえ、活用なさる方の責任においてご活用ください。

インボイス制度をめぐる協力業者(外注先)とのコミュニケーション文書例
(以下、事例)———————————————————————————————————————–
協力事業者の皆様
インボイス制度対応アンケート
202●年●月●日
●●株式会社
●●●●

前略
平素より弊社事業に多大なるご協力を頂き誠にありがとうございます。
さて、わが国では、2023年10月1日より、いわゆる「インボイス制度」が開始されます。これに伴い、消費税申告及び納税を行う「適格請求書発行事業者」(注1)にならない限り、いわゆる「適格請求書」を発行できなくなり、消費税額をご請求頂くことができなくなります。

皆様におかれましては、この「インボイス制度」へのご対応を種々ご検討のことと思います。弊社といたしましても、皆様とのコミュニケーションを通じて、この制度対応を図っていきたいと考えております。ついては、お忙しいところ誠に恐縮ですが、下記に、貴社名・ご担当者名等をご記入いただくとともに、現在ご検討の対応方針に最も近い[  ]に○を付けて、ご返信いただけると幸いです。なお、すでに適格請求書発行事業者登録番号の通知を受けている場合には、その番号も付記いただけると幸いです。
草々


貴社名・ご担当者名 [              ]
1 2023年10月1日以降、適格請求書発行事業者となり引続き消費税額を請求する(注2)貴社の適格請求書発行事業者登録番号[              ](通知を受けている場合ご記入ください)
[   ]1-1 取引価格(税抜価格+消費税)に変更を予定していない。
[   ]1-2 新たに消費税申告及び納税を行うことにより利益が減少することから、取引価格(税抜価格+消費税)の相応の値上げを検討している。

2 適格請求書発行事業者にはならず、消費税額を請求しない。
[   ]2-1 現在の取引価格(税抜価格+消費税)のうち税抜価格を取引価格とする予定。
[   ]2-2 消費税相当額を請求できなくなることにより利益が減少することから、税抜価格から相応の値上げを行った額を取引価格とすることを検討している。

3 その他(内容をご記入ください)
[   ] [                                  ]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
注1 詳しくは、国税庁サイト(一例として以下)をご覧いただくか、税務署にお尋ねください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022001-174.pdf
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm
注2 この場合、2021年10月1日から2023年3月31日までの間に適格請求書発行事業者登録申請書を税務署に提出する必要があります。
(以上事例)————————————————————————————————————-

なお、財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省は、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を連名で発表し、取引や取引条件の見直し方法如何によっては、独占禁止法、下請法、建設業法上問題になりうることを明らかにしています。社内外の関係者や法律専門家、税理士とも十分ご協議のうえ、ご活用ください。

国内の取引関係が円滑に維持されることをお祈りしております。

 

修正申告の別表四における消費税の処理方法(消費税差額をどう表現するか)

(概要)
・税抜処理の法人が修正申告が行う場合、別表四における消費税の処理方法は、次の2つが考えられる。
別表四に損益計算書への影響を記載する方法(以下、第1法)と別表四に貸借対照表への影響額を記載する方法(以下、第2法)とである。
・税務署での署内処理は、第1法にて処理されている模様であるが、担当官とのコミュニケーションを図れれば、第2法も容認されている模様である。
・この2つは消費税差額の表現方法に違いがある。
・今般の修正について、損益計算書を遡及修正したり、前期修正損益を計上する場合には第1法が、単に申告調整で済ませる場合には第2法が、効率的だと思われる。

(以下、本記事について全文をご覧いただく場合には、リンク先(noteにおける有料記事500円)をご覧ください。)

法人成りは「節税」になるのか。

(概要)
・一定以上の事業所得がない場合には、法人成りにより、税金及び社会保険料の負担合計額は増加します。

(詳細)
・所得税や法人税などの税金は、法人成りにより負担を抑えられる傾向にありますが、他方で、社会保険料の負担が増加する傾向にあります。この両方の負担を考えた場合、一定以上の事業所得がない場合には、法人成りにより、税金及び社会保険料の負担合計額は増加します。例えば、稼いだ利益をすべて役員報酬と法定福利費で支出する場合を仮定した場合、事業主が実質的に負担する所得税や法人税などの税金及び厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料は、次のような推移となり、その合計額は、事業所得が10百万円以下の範囲では、法人成り前より増加します。

・もちろん、社会保険料計算の対象とする報酬には上限があるし、所得税率は累進税率であることから、事業所得が一定額を超えた場合には、法人成りが有利になる可能性があります。また、法人化した場合、現役引退時に役員退職慰労金として支出すれば、(1)社会保険料が課されない、(2)一定の範囲内で法人の損金となる、(3)個人の所得計算上も有利になるなどの理由により、法人成りが有利になる範囲は広げられます。ただし、役員退職慰労金として支払うまで全額の課税を繰り延べた例を考えても、個人事業より有利になる所得水準は、相応に高いものとなります(下図の例では、約15百万円)。

・加えていうと、課税の全額を繰り延べることは極端な事例であり、実際には限定的になされると思いますので、その場合には、前述の水準はさらに上がります。逆に、厚生年金に加入できない70歳以上の方が法人成りをする場合や多額のいわゆる「社会保険料対策」を行う場合にはその水準は下がります。
・本投稿においては、例えば年金受給額の影響を無視するなど、さまざまな仮定を明示せずにおいていますので、実際の判断にあたっては、顧問の税理士にご相談をお願いします。

納税作業を効率化したい法人のために

<概要>
・2019年10月より、地方税の「ダイレクト納付」という全国共通の口座振替制度が始まったことにより、国税・地方税ともに銀行窓口に出向くことなく、納税が可能となりました。

<詳細>
ダイレクト納付とは、電子申告(国税はe-Tax、地方税はel-tax)により申告書等を提出した後、納税者ご自身名義の預貯金口座から、即時又は指定した期日に、国税あるいは地方税を口座引落しにより納付する手続のことをいいます。具体的には、金融機関の口座を記載し銀行印を押印した所定の用紙を、所定の機関(国税の場合税務署、地方税の場合指定金融機関)に提出しておけば、税理士側で振替納税の手続きが行えます。
もし、現在、納付書を税理士に書いてもらって、金融機関で納付していたとしたら、こうした紙での受け渡しや、金融機関窓口に並ぶ手間(さらに、多数の自治体に跨って事業所がある場合には複数の金融機関に行く必要がある手間)が省け、毎月の源泉税・特別徴収税額や申告時の法人税や消費税等の納付に大活躍します。

参考リンク
●共通
日本マルチペイメントネットワーク運営機構 「ダイレクト納付」の仕組みを記したチラシ
https://www.pay-easy.jp/news/DC.pdf

●国税
国税庁 ダイレクト納付の手続
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/index.htm

●地方税
地方税共同機構
「ダイレクト納付」の申込方法については、PCdesk(WEB版)ガイドの「納税の手続を行う」の章を参照するのがわかりやすい。
https://www.eltax.lta.go.jp/support/document/
PCdesk(WEB版)は次のサイトにアクセスする。
https://www.portal.eltax.lta.go.jp/apa/web/webindexb#eLTAX

編集履歴
2019年9月27日 地方税のダイレクト納付が開始されたことに伴い、記事を変更