ウクライナ企業へのソフトウエア開発外注に係る源泉所得税は不要?

●概要
海外の企業に対してソフトウエア開発を外注する場合、著作権の使用許諾や譲渡が行われていると認められるときなどに、外注費の支払いにおいて源泉所得税を控除しなければらないことがあるが、ウクライナ企業に外注する場合には、租税条約によって源泉不要となる場合が多い。

なお、本稿は、研究を目的に掲載するもので、実務上の適用にあたっては、顧問の弁護士や税理士にご相談ください。

●詳細
(前提)
ウクライナに所在する法人又は個人(以下、外注先)に対して、ソフトウエアの開発を日本企業(以下、委託者)が外注する場合、委託者は外注費の支払いに際して、どのような日本国での税務が必要となるか。

検討を容易にするため、次の場合を検討する。
① 委託者は、外注先の保持する著作権の使用許諾を受けて、納品データを使用や複製する場合。
② 委託者は、納品データとともに、外注先から著作権の譲渡を受ける場合。
③ 納品データに著作性はなく、外注に際して著作権の譲渡を伴わない場合。
④ 個人の外注先を委託者が従業員(非役員)として雇用し、ウクライナにおいて勤務する場合(著作権は職務著作として委託者に原始的に帰属する)。

外注先は、日本に支店や代理人を有していないものとする。また、外注先は、委託された作業を、ウクライナ国内においてのみ行い、データのみを通じて納品するものとする。

(結論)
1 源泉所得税:
① 免税 (ただし、租税条約に関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり)
② 免税 (ただし、租税条約の関する届出書を日本国の税務署に提出する必要あり)
③ 源泉徴収不要
④ 源泉徴収不要(なお、日本国における社会保険の加入について別途検討を要することに留意)
2 消費税:
不課税

(理由)
1 源泉所得税
① 日本国の所得税法では、著作権の使用料として、20.42%の源泉徴収必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)が、日宇間の租税条約として適用される日ソ租税条約により免税(日ソ租税条約第9条第2項a)
② 日本国の所得税法では、著作権の譲渡対価として、20.42%の源泉徴収が必要である(所得税法第161条第1項第11号ロ)が、日宇間の租税条約として適用される日ソ租税条約上は資産の譲渡として扱われ、譲渡者の居住地国のみで課税できることから、日本国では免税(日ソ租税条約第11条第5項)
③ 日本国の所得税法では、非居住者に係る源泉所得税を課す国内源泉所得につき、所得税法第161条に列挙しているが該当するものがない。
④ 日本国の所得税法では、役員でない従業員の海外勤務について源泉所得税を課していない(所得税法第161条第1項第12号イ)

2 消費税
①〜③ 消費税法上の資産の譲渡に該当するが、外国において役務提供が行われるため、国外取引として不課税
④ 消費税法上の資産の譲渡に該当しない。

(参考文献)
東京国税不服審判所次席国税審判官 小島 俊朗「プログラム開発を海外に委託する場合の手数料への課税とその所得区分について」『税大ジャーナル 8 2008. 6』https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/backnumber/journal/08/pdf/08_03.pdf

『税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」及び日本国とウクライナの二国間の関係に適用される「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約」に係る統合条文』
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/tax_convention/191018ukraine_j.pdf