給与支払いがない場合の源泉税の納付方法

(概要)
・給与支払がない場合には、税務署より源泉税の納付書が自動的に送られてこない。(2019年6月6日現在)
・それでも、士業報酬等にかかる源泉税の納税は必要であり、この場合の納税方法としては、電子申告及びダイレクト納付登録を税理士に委任するのが便利。
・どうしても納付書により納税したい場合には、税務署に連絡し納付書を複数部取り寄せておき、必要に応じて歳入年度を訂正して用いればよい。
・なお、納付書を取り寄せる方法としては、電話(納税者自身に送付する場合)や郵送で取り寄せる方法もあるが、源泉税の納期特例申請提出時に、給与支払事務所等にかかる開設届出書も作成・提出し、その中の「その他参考事項」に「給与支払はないが士業報酬支払があるため、納付書を〇部送付してほしい」旨記載しておく実務も考えられる。

(詳細)
<給与支払がない場合には、税務署より源泉税の納付書が自動的に送られてこない>
法人であっても、次のような場合には、給与支払いがないことがある。
・親会社等が存在しており、全員出向者で構成されている法人
・役員の個人資産に余裕があり社会保険料を支払ってまで役員報酬を必要としない、あるいは、設立直後で財源がないなどの理由で、役員報酬や従業員給与を支出していない法人
個人の場合には、給与支払いがない場合には、士業報酬等にかかる源泉所得税の源泉義務はない。しかし、法人の場合には、給与支払いがなくとも、士業報酬等にかかる源泉所得税の源泉義務がある。こうした中、税務署の事務では、前年に給与支払にかかる源泉税が申告されていない場合、納付書の送付は行われず(2019年6月6日現在)、また、納税者や整理番号の入っていない源泉税の納付書を税理士には発行してくれないため、給与支払いのない法人の源泉税の納付方法が問題となる。

<給与支払がない場合には、士業報酬等にかかる源泉税は、電子申告及びダイレクト納付が便利>
この場合の納付書の入手は、後述のように面倒であることから、ダイレクト納付の手続きを済ませ、税理士に電子申告及びダイレクト納付を委任することが効率的だと考えられる。

<どうしても納付書により納税したい場合には、税務署に連絡し納付書を複数部取り寄せる。>
ただ、どうしても納付書により納税したい場合には、税務署に連絡し納付書を複数部取り寄せておく。このとき、将来の納入分については、歳入年度が空白のものをもらえばよいが、税務署は、歳入年度が空白の納付書は交付してくれない(2019年6月6日現在)。よって、歳入年度が異なる場合には、必要に応じて歳入年度を訂正して用いる。

<源泉税の納期特例申請提出時に、給与支払事務所等にかかる開設届出書を提出して、納付書を取り寄せるという方法もある。>
なお、納付書を取り寄せる方法としては、電話(納税者自身に送付する場合)や郵送で取り寄せる方法もあるが、上記のような法人で本人もしくは税理士が必ず提出するであろう、源泉税の納期特例申請提出時に、給与支払事務所等にかかる開設届出書も作成・提出し、その中の「その他参考事項」に「給与支払はないが士業報酬支払があるため、納付書を〇部送付してほしい」旨記載しておく実務も考えられる。このような場合に、同届出書の提出義務は所得税法上ない(注)が、税務署実務ではその提出を受理している模様である。なお、複数部の納付書を取り寄せておくのは、前述の記載をしても、毎年自動的に送付されるわけではないためである。

注 所得税法第二百三十条ほかの定めをみるに、給与支払がない場合には、源泉が必要な報酬があったとしても、給与支払事務所等の開設届出書の提出義務はないものと考えられる。

所得税法
(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)
第二百三十条 国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、又はこれらを移転し若しくは廃止した者は、その事実につき前条の届出書を提出すべき場合を除き、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。

所得税法施行規則
(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)
第九十九条 国内において法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この条において「給与等」という。)の支払事務を取り扱う事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下この条において「給与支払事務所等」という。)を設け、又はこれを移転し、若しくは廃止した者は、その事実につき前条の届出書を提出すべき場合を除き、法第二百三十条(給与等の支払をする事務所の開設等の届出)の規定により、次に掲げる事項を記載した届出書を、その給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長(給与支払事務所等を移転する場合には、その移転前の給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長)に提出しなければならない。
一 その届出書を提出する者の氏名又は名称、住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地及び個人番号又は法人番号(個人番号及び法人番号を有しない者にあつては、氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地)
二 給与支払事務所等を設け、又はこれを移転し、若しくは廃止した旨及びその年月日
三 給与支払事務所等の所在地(給与支払事務所等を移転する場合には、その移転前の給与支払事務所等の所在地及びその移転後の給与支払事務所等の所在地)
四 その届出書を提出する日の現況におけるその給与支払事務所等において給与等の支払を受ける者の職種等の別の人員数
五 その他参考となるべき事項

所得税法
(給与所得)
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。

 

弥生会計で補助科目の前期比較残高を印刷する方法

(概要)
「残高試算表」前期比較の印刷画面における「印刷帳票」を「前期比較補助残高一覧表(月次・期間)」に変更することで、印刷することができる。

(詳細)
・弥生会計では、「補助残高一覧表」画面では前期比較を表示できない(2019年6月10日現在)ことから、補助科目残高の前期比較ができないように思える。
しかし、次のように残高試算表の印刷画面の設定を少し触ることで、前期比較補助残高一覧表を印刷することができる。

・弥生会計で補助科目残高の前期比較を印刷する方法は、次のとおり。
1) 集計>残高一覧表>月次・期間 にて「残高試算表(月次・期間)」を表示させる。
2) ☑「補助科目を表示」にチェック、☑「前期比較表示」にチェック
3) 残高試算表 画面右上の「印刷」をクリック
4) 印刷画面の「印刷帳票」にて、「前期比較残高一覧表(月次・期間)」を「前期比較補助残高一覧表(月次・期間)」に変更する。
5) 印刷画面の「印刷する勘定科目」にて、「選択」をチェックし、印刷させたい勘定科目を選ぶ。
6) 印刷画面のOKを選択し、印刷を実行。

(2019年6月10日現在、弥生会計19 ver.25.2.1)

配当所得を総合課税にすべきか

(概要)
・課税所得が小さい場合には、配当所得を総合課税にすることにより、源泉されたときの税率より低い税率が適用できたり配当控除を適用することによって、分離課税より有利になる傾向がある。
・どちらか有利かは簡単には判定できないため、確定申告作成時には、証券会社等からの取引報告書を踏まえて、総合課税と分離課税それぞれの場合について所得税・住民税を試算・比較することをお薦めしたい。

(詳細)
● 前提
・扶養する配偶者がいると仮定。
・金融商品の運用は、上場株式の売買と配当受領のみを行っていると仮定。
・証券口座は、特定口座一つと仮定。
・配当所得にかかる申告方法(分離、総合)は、所得税と住民税とで同じ方法を採用すると仮定。
・譲渡損失が発生してこれを翌年度以降に繰り越す場合、分離課税を選択することにより、通算する配当額だけ損失繰越額が減少するが、翌年以降に譲渡益が発生するとは限らないため、この影響は無視する。

● 具体的な場合分け
・ 上場株式について配当を上回る譲渡損失が出ている場合、所得の金額にかかわりなく、譲渡損失の繰越を選択し、かつ、分離課税にする方が有利である。なぜならば、分離課税のままであれば譲渡損失と配当は通算され配当に対して実質的に税金は課されないが、総合課税にした場合には配当に対して所得税及び住民税が課されるためである。なお、総合課税時、配当控除という所得控除があるが、配当に対する合計税率(所得税+住民税)は、総合課税時の配当控除の合計税率(所得税+住民税)より常に高く、配当に対して税金が課されることに変わりがない。

・ 上場株式について譲渡損失が出ていない場合、配当所得やそれ以外の所得の金額、各種所得控除の金額によって、どちらが有利かが決まる。一般的には、合計所得が小さく配偶者控除への影響が乏しく、さらに、適用される所得税率が小さければ、総合課税が有利となる(下図)。

 

租税教室 教材例(2019年・名古屋国税局管内用・中学生向け)

弊事務所では、地元の租税教育推進協議会に協力し、地元の学校で行われる租税教室の講師を担当させていただくことがあります。租税教育については、優れた事例集や資料集が国税局のWEBサイトで公開されているところですが、提供形態がPDF形式のものが多く直接の活用が困難だと思われますので、パワーポイントで弊事務所版のレジュメを公開いたします。租税教育のため教室内で利用する場合には、講師の責任にて自由に加工して使っていただければと思います。

2019年度版租税教室資料例(名古屋国税局管内用 中学生向け)

特徴
・税を通して社会や国の在り方について考えることを重視した授業展開を想定しています。
・税金の集め方についての、生徒によるディスカッションを含めています。
・個人別の所得額や消費額に応じた税額を、生徒に考えてもらいます。
・担当講師が加工して使っていただけるように、パワーポイントにて提供しています。
・自己紹介を除き、講師が発言すべきことは、極力ノートに記載しています

前提
・名古屋国税局が作成した、次の教材の使用を前提としています(過年度の教材は国税局のサイトから削除されていることがあります。
中学生用「ハロー・タックス」(令和元年度版)
https://www.nta.go.jp/about/organization/nagoya/education/kyozai02/index.htm
・税理士が講師を務めることを前提に、自己紹介では税理士の職業紹介をしています。
・50分での授業展開になっています。

関根稔先生の相続セミナーに参加してきました。

(概要)
不動産の価値が下がり続ける時代には、借金をして収益性の低い賃貸物件を建てるよりも、余裕資金でご子息の自宅を建てた方が、意味ある相続税対策になる。

(詳細)
先日、弁護士の関根稔先生の相続セミナー(東海税理士会主催「相続事案の注意点」2018年11月20日)に静岡まで行ってきました。

相続のアドバイスにおいて、為になるお話、盛沢山でした。

中でも印象的だったのは、昨今、不動産の価値は下がり、事業は縮小傾向、そして90歳までの人生を考えたとき、やるべきは不動産投資などの相続税対策ではなく、資産のお片付けと豊かな老後を過ごすための準備だというお話。

というのも、少しの相続税のために莫大な借入金を可愛い子息に残してしまう例が多くなっているとのこと。すなわち、相続税の節税のために多額の借入金で賃貸不動産に投資して、借入金を返済できるほどの賃貸収益を得られることができず、値下がりを続けるその不動産をやむなく売却し、借入金だけが残ってしまうという最悪のケースが、たくさん出てきていると。

その代わりに提唱されていたのが、資産と借金を整理し、手許に残った余裕資金で、子息の自宅を建ててあげること。建物は建設した時点で、半分くらいの評価額になるし、90歳まで生きるとしたら、その時の建物の評価額は、減価償却して相当低くなるから、これだけで有効な相続税対策になるというわけです。さらに言えば、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度を使って子息の名義にしなくても、自分名義で建てれば、それだけで相続税対策になる。不動産の価値が上がり続ける時代であれば、非課税制度を使って子息の名義にすることが有効だけれども、不動産の価値が下がり続ける時代には、自分名義で建ててあげればそれでよい。不動産の価値が下がり続ける時代には、有効で意味ある相続税対策方法ですね。

私の最近の相談でも、生前贈与等の対策を施せば、借入による不動産投資と同等以上の相続税対策が実現できることがわかった事例もありました。何を重視するかは、最後は、資産家の方々のご判断次第ですが、お気持ちに沿った対策をご選択できるように、相続税対策のシミュレーションのご依頼に際しては、必要に応じて代替案のご提案も行って参りたいと思います。


追記 セミナー後、「獣になれない私たち」(日本テレビ系列のドラマ)の5tap的なおしゃれなビアバーで飲んで、帰ってきました。

山林及び立木の相続税評価の実際

(概要)
・相続税の財産評価の解説書は多く出ているが、山林及び立木については、評価基礎資料の地域性も高いため、具体的な評価方法を記載している解説は少ない。
・山林及び立木の評価のポイントは、森林簿、保安林台帳、分収造林契約書といった評価基礎資料を適切に入手することにある。

(詳細)
弊事務所は、浜松市の北部に位置することから、山林及び立木を相続財産に含む相続税申告のご依頼をいただくことがあります。
相続税の財産評価の解説書は多く出ているところですが、山林及び立木については、基礎資料の地域性も高いためか、具体的な評価方法を記載している解説は少ないと考えられます。そこで、弊事務所での評価作業例を紹介していきたいと思います。

1.必要書類の入手

① 森林簿の入手
静岡県内の山林及び立木の評価においては、まず、県農林事務所作成の森林簿を入手する。
入手先:静岡県〇〇農林事務所

※ 市町村でも森林簿を保管している例はあるが、静岡県においては、森林簿の作成は県が行っているので、県の農林事務所で入手した方が二度手間にならないと考えられる。
※ 静岡県森林情報共有システムでも、森林簿の閲覧ができるが、相続税の評価に必要な情報がすべて記載されているわけではない。逆に、農林事務所窓口で交付される森林簿にも、評価に必要な情報が記載されていないこともある。たとえば、後述の立木の評価における「地味級」は、静岡県森林情報共有システムの森林簿における「林地の生産力」(「地位」とも言われる)を利用するか、農林事務所に口頭で確認する必要があることがある。

② 保安林台帳の入手
①にて森林簿を入手した結果、当該立木の中に、保安林が存在する場合には、伐採関係区分の把握のため、県農林事務所作成の保安林台帳を入手する。
入手先:静岡県〇〇農林事務所

③ 分収造林契約書の入手
①にて森林簿を入手した結果、当該立木の中に、第三者の立木が存在する場合には、分収造林(例えば、国の水源林造成事業においては、水源林の維持のため、国の費用の負担のうえで造林を行い、林地所有者、造林作業者(森林組合)、費用負担者(国)で立木収益の分配を行う。)の可能性が高いことから、持分割合把握のため、分収造林契約書を入手する。当該契約書は、造林地所有者である被相続人が保管しているはずだが、もし見当たらない場合には、立木所有者に協力を求める。

山林が水源地に所在する場合には、当該分収造林が、国の水源林造成事業によるものであることがある。この場合、現在の所有者は、国立研究開発法人森林研究・整備機構(注)となるので、次の先に協力を求める。

国立研究開発法人森林研究・整備機構
森林整備センター 〇〇水源林整備事務所

注:国の水源林造成事業は、森林開発公団、緑資源公団、独立行政法人緑資源機構、独立行政法人 森林総合研究所、国立研究開発法人 森林総合研究所、そして、現在の国立研究開発法人 森林研究・整備機構への引き継がれているため、森林簿や登記簿には、旧名称が記載されていることに留意する。

2.森林の立木の評価
① 標準価額の把握
森林簿をもとに、樹種(杉orヒノキorその他)、林齢(樹齢)を確認し、1ha当たりの標準価額を国税庁が公表している財産評価基準書における県別及び基準年度別の「森林の立木の標準価額表」より拾う。標準価額表(静岡県)には、杉、ヒノキしか記載がないが、その他の樹種(例えば、黒松、その他の広葉樹)は、地元の木材卸事業者にヒアリングを行ったうえで、当地では市場性がないものと判断し、ゼロと評価した。また、標準価額表には、標準伐期の2倍を超える樹齢について「ー」と記載されているが、これは「事情精通者の意見を参酌して定める価額」(財産評価基本通達115(3)ロ)が必要であるためで、この場合には、地元の木材卸事業者にヒアリングを行って標準価額を決定する。

②地味級
スギ、ヒノキ、松については、一本あたりの立木体積データが必要となるが、当地の森林簿から計算することができないので、弊事務所では、森林簿における地位(「林地の生産力」ともいう)をもとに、暫定的に判定している。
(地位) (地味級)
I、Ⅱ  → 上
Ⅲ    → 中
Ⅳ、Ⅴ  → 下

③ 立木度
森林簿の林種より判定。弊事務所では、人工林は密として評価。

④ 地利級
森林簿の「林道からの距離」を地利級判定表の小出し距離に当てはめ、小運搬距離は分からなかったので一番評価の高いところとし、等級を判定。

⑤ ②~④の結果を総合等級表に当てはめ、総合指数を判定。
地味級、立木度、地利級の指数を乗じたものが総合指数となるが、各指数を調べて乗じるよりも、総合指数表での判定が効率的である。
なお、財産評価のためのソフトウエア(弊事務所では、(株)NTTデータ製「財産評価の達人」を利用)では、地味級、立木度、地利級を入力すると自動判定してくれる。

⑥ 保安林については、保安林台帳の保安林の種類と指定施業要件より、控除割合の判定。
保安林台帳には、保安林の種類として「水源かん養保安林」や「土砂流出防備保安林」等の記載があり、指定施業要件として「皆伐」、「択伐」、「禁伐」、「間伐」の記載がある。これらの記載を、財産評価基準書における県別及び基準年度別の「伐採制限等を受けている山林の評価」別紙「森林法その他の法令の範囲等」に当てはめ、控除割合(一部皆伐(0.3)、択伐(0.5)、単木選抜(0.7)、禁伐(0.8))を判定する。

例えば、「水源かん養保安林」で「皆伐」及び「間伐」の指定がなされている場合には、当該別紙「森林法その他の法令の範囲等」における区分「水源かん養保安林」の伐採の方法等「伐採種を定めない」ものに分類できることから、一部皆伐(0.3)の控除割合と判定できる。

⑦ 分収造林について持分割合の把握
第三者が所有者の立木について分収造林契約がある場合には、林地所有者の分収割合を、共有持分割合として判定する。
例えば、分収造林契約書より、所有者の分収割合が40%であることが判明する場合には、共有持分割合を40/100とする。

⑧ 面積の把握
評価額の重要な要素である⑤総合指数について森林簿の情報をもとに算定すること、また、森林簿は実測値に近い数字として信頼できることから、弊事務所では、森林簿における面積を採用している。

⑨ 評価額の算出
以上の情報をもとに、以下の算式で相続税評価額とする。
①×⑤×(1-⑥)×⑦×⑧×85%(立木の特例、相続税法26条の2)

3.山林(林地)の評価
① 面積の把握
登記簿の面積ではなく、森林簿の面積に引き直して評価する。
登記簿の面積と森林簿の面積は、大きく違うことが多い。さらに、保安林の面積も、登記簿とも森林簿とも違っているものもあった。
各面積は、静岡県の場合、下記のように決定されている模様である。
・登記簿・・・近年の地籍調査による実測値が反映されているものもあるが、森林には、長年実測が行われず、いわゆる縄延びの問題を抱えたものが多く含まれている。
・森林簿・・・航空写真から推定して計算されている。
・保安林台帳・・・登記簿の面積を利用、あるいは、実測して作成されている。
実測されていると判断できる保安林については、保安林台帳の面積が最も正しいと推測されるが、保安林台帳の面積を採用すると森林簿をもとに評価することが最も適当と考えられる立木の評価と整合が取れなくなる。そこで、弊事務所では、整合性を考慮して、森林簿の面積を採用することとしている。

具体的には、固定資産税評価額を登記簿面積で除して、森林簿の面積を乗じることで、森林簿の面積による固定資産税評価額を算出している。

② 倍率表の倍率の把握

③ 保安林の控除割合の把握
保安林については、立木の評価と同じ控除割合を利用する。
倍率に乗じて計算する場合には、(1-控除割合)を利用する。

④ 権利割合の把握
分収造林契約に基づき地上権が設定されている森林については、分収割合及び契約残存期間を元に、権利割合を計算する。
例えば、契約残存期間37年の場合で地上権割合が0.6と評価され、また、分収割合が0.4の場合
[底地部分の権利割合(1-0.6(地上権割合))]+[地上権部分のうち自らの権利割合(0.6(地上権割合)×0.4(分収割合))]=0.64

⑤ 評価額の算出
①の固定資産税評価額に②~④の倍率を乗じて、評価額を算出。

以 上

本サイトの情報への問い合わせは、弊所のお客様に対してのみ応じております。お客様以外からの問い合わせには応じておりません。

弥生PAPカンファレンス 2018 夏に参加してきました。

<概要>
・中小企業と会計事務所は、各社から次々と提供される廉価あるいは無料のITサービスを利用して、業務を効率化していくことができる。
・仕訳データを活用した法人融資審査業務を提供するアルトア(株)と地域金融機関との提携は、地域金融機関における法人融資審査を進化させる可能性を秘めている。


(弊事務所事例発表)

<詳細>
2018年7月4日、弥生PAPカンファレンス 2018 夏の名古屋会場に参加してきました。
事例発表では、弊事務所からも、弥生会計を活用した経理業務の効率化事例を発表させて頂きましたが、二組目の登壇者である税理士法人葵パートナーズ様の発表、また、弥生(株)の子会社であるアルトア(株)の発表は、とても刺激的な内容でした。

税理士法人葵パートナーズ様の発表では、各社から次々と提供される廉価あるいは無料のITサービス(chatworkslackfacebookメッセンジャーgoogleドライブgoogleスプレッドシートkintoneクラウドサイン)を駆使して、会計業務の効率化、雇用体系の多様化を図り、そこで生み出される時間を活かし、地域の枠を超えて高付加価値を提供する会計事務所の在り方を、勉強させていただきました。

また、アルトア(株)の発表では、仕訳データを活用してAI即時自動審査を行っている法人融資サービスにつき、平成29年12月に自社で開始した現状が報告されました。同社では、地域金融機関(千葉銀行、福岡銀行、山口フィナンシャルグループ、横浜銀行)と業務提携しており、将来的に、地域金融機関での同機能の活用を目指されています。決算情報を基にした単なるスコアリングではなく、仕訳一本一本を分析して、人による融資審査に近づけようとするシステムの導入は、融資担当者をできる限り定量的な分析から解放し定性的評価に集中できるという意味で、法人融資の効率化と深化を推進していくものと思われます。

弊事務所としても、適切な納税義務の実現や金融の円滑化に役立つ会計サービスを、効率的にお客様にご提供できるよう、業務プロセスの不断の見直しを図っていきたいと思います。

(公式サイトへのリンク:https://www.yayoi-kk.co.jp/pap/report/conference-2018/summer.html

過年度について修正申告や更正の請求がある場合の別表五(二)の書き方

(概要)
・別表五(二)に記載する未納税額は、国税に提出した修正申告や更正の請求の内容に連動させる。
・別表五(二)に記載する納税充当金は、企業会計上の勘定科目(未払法人税等、未払事業税)に連動させる。

(詳細)
日本の企業会計では、平成21年12月4日に「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)と同適用指針(企業会計基準適用指針第24号)が公表されました。 この結果、平成23年4月1日以後開始する事業年度の期首以後、会計方針や表示方法の変更、過去の誤謬の訂正があった場合には、あたかも新たな会計方針や表示方法等を過去の財務諸表にさかのぼって適用していたかのように会計処理又は表示の変更等を行うこととなりました。では、このとき、過年度の税務申告について、修正申告や更正の請求を行う場合、税務申告書の記載はどのように行ったらいいのでしょうか。別表四及び別表五(一)の記載については、言及している書籍やサイトも多いので、以下では、別表五(二)について私見を述べていきます。判断に迷う場合には、所轄の税務署に相談していただければと思います。

別表五(二)の記載の基本的な考え方について

・別表五(二)に記載する未納税額は、国税に提出した修正申告や更正の請求の内容に連動させる。

・納税充当金は、税務申告上の未納税額ではなく、企業会計上の未払税金(「未払法人税等」「未払事業税等」など)に係る勘定科目残高を反映させる。

・過年度について修正申告や更正の請求を行った場合に、企業会計上も遡及修正した場合には、「期首現在未納税額①」(事業税の場合は「当期発生額②」)及び「期首納税充当金㉛」を修正したうえで(注)、「充当金取崩しによる納付③」を反映する。ただし、地方税のみの修正申告や更正の請求を行い国税について修正申告や更正の請求を伴わなかった場合、前述の取扱いのうち「期首現在未納税額①」の修正は、「当期発生額②」の修正と読み替える。

注 過年度の企業会計上の遡及修正に合わせて、別表五(二)の納税充当金の期首を変更する場合には、別表五(一)の「納税充当金」期首も変更することになるが、同時に「繰越損益金」はじめ利益積立金各区分の期首も、企業会計上の遡及修正に合わせて変更することで、別表五(一)利益積立金の「差引合計額」期首に変更がないようにし、別表五(一)利益積立金の連続性を差引合計額ベースで維持する。

・過年度について修正申告や更正の請求を行った場合に、重要性に鑑み遡及修正せず当期の法人税等や事業税等として会計処理した場合には、「期首現在未納税額①」(事業税の場合は「当期発生額②」)を修正したうえで、「損金経理による納付⑤」に反映する。ただし、地方税のみの修正申告や更正の請求を行い国税について修正申告や更正の請求を伴わなかった場合、前述の取扱いのうち「期首現在未納税額①」の修正は、「当期発生額②」の修正と読み替える。

・以上の取扱いで、企業会計上の未収税金(「未収還付法人税等」など)に係る勘定科目残高の遡及修正が生じる場合には、別表五(一)における利益積立金の調整区分(「仮払税金」等)に反映するか、別表五(二)の納税充当金をマイナス表示にする。

・事業税の修正申告を行った場合、修正申告を行った日の属する事業年度に損金算入することが原則であるが、修正申告の対象が前々期などの場合、修正申告対象年度の翌期に減算することもできる。この方法を採用する場合には、修正申告対象年度の翌事業年度に別表四で減算・留保したうえで、修正申告にかかる納税を行った事業年度に当該留保金額を別表四で加算・留保という調整を行うが、実際の事業税追徴税額と損金認容額が異なることがあるから、原則通り、別表五(二)の記載は、修正申告を行った日の属する事業年度において当期発生額②に記載し、追徴税額の納付を行った事業年度に「損金経理による納付⑤」に反映することがわかりやすい。

編集履歴 2018年10月26日 地方税のみ修正申告や更正の請求を行った場合の取扱いを追記しました。2022年7月22日 遡及修正の場合の別表五(一)への影響を追記しました。

節税にこだわり大事を忘れるな

<概要>
・節税と思っている取引も実は、「節税」のための取引コストが実は節税額を上回っていた、あるいは、「節税」のための支出のために、必要な投資ができなくなる、借入返済ができなるという失敗例がある。
・節税は、内部留保を増やしていくために税金をきっちりと納めていくことを基本にしたうえで、税額控除制度や免税制度、各種の税率差等を活用して、納税額を適度に低減していくことにある。

<詳細>
「小事に拘りて大事を忘るな」ということわざがある。目先の小事にこだわって肝心な大事を忘れてはならないという意味であるが、いわゆる「節税」についても同様の事が起こらないようにしたい。

「節税」と世の中でいわれている取引は、その効果に着目すると、次の2つに分けられると思う。
① スキーム全体での税額の低減(本当の意味の節税)
② 単なる課税の繰り延べ
節税と思っている取引も実は、スキーム全体で見れば、②のように単なる課税の繰り延べに過ぎないということがある。
たとえば、法人税において、今期儲かったからと、特別償却や生命保険を活用した一時的な損金の計上を行う場合があるが、これは将来的な損金の減少及び益金の増加を伴う。もし業績が今後も好調であれば、課税の繰り延べに過ぎない可能性が高い。
また、相続税についても、節税するスキームが、実は、その「節税額」以上に、法人税を増税させるスキームだけだったというものもある。
①の意味での節税を実現することは、税額控除制度や免税制度、各種の税率差を利用した節税以外、実は、なかなか難しい。

また、「節税」を行った場合のよくある失敗例として
③ 「節税」のための取引コストが、実は節税額より大きかった。
ということがある。
例えば、節税商品のパンフレットには、シミュレーションが記載されている場合が多いが、商品払込時の節税額は含まれているのに、配当や譲渡時(解約時)の課税額が計算されていないというものも存在する。これよって、「節税」のための取引コストが節税額より大きいということが隠されている。

さらに、厳しい失敗例としては、
④ 「節税」のための支出で、資金繰りが苦しくなる。
ということがある。
法人税や所得税の場合、事業から課税所得が得られている中で、損金性の商品を購入してその税金を払わないようにするためには、毎年、事業から得られる所得と同額以上の損金性の商品を購入しなければならなくなる。すると、事業から得られた儲けは、ほぼ、その商品の購入のための支出に回すことになる。そうすると、将来への投資あるいは、過去の借入の返済ができなくなる。すなわち、税金を払わないという発想の節税では、事業を継続できなくなる。内部留保を作っていくには、所得をプラスにして、所得に対する税金を支払う必要がある。

節税は、内部留保を増やしていくために税金をきっちりと納めていくことを基本にしたうえで、税額控除制度や免税制度、各種の税率差等を活用して、納税額を適度に低減していくことにある。

大工(個人事業主)が、自分で自宅を新築した場合であっても、住宅ローン控除の適用を受けることができる。

<概要>
大工(個人事業主)が、自分で自宅を新築した場合であっても、住宅ローン控除の適用を受けることができる(平成30年3月6日現在)。

<詳細>
いわゆる住宅ローン控除を定めた租税特別措置法第四十一条においては、生計一の親族からの取得を適用除外と定めているが、租税特別措置法第二十六条第三項によれば、適用除外となる取得とは既存住宅(中古住宅)と土地に限られており、家屋の新築、建築後使用されたことのない家屋については、適用除外となっていない。
したがって、個人事業主である大工が自分で自宅を新築した場合等については、ローン控除の適用が受けることができると解される。

この点、国税庁HPにある住宅ローン控除のチェック表においても、中古住宅の要件の中に、「その家屋の取得時において自己と生計を一にし、その取得後においても引き続き自己と生計を一 にしている親族等から取得したものでない」との項目が定められている一方、新築については、何も記載されていない。

生計一の親族からの取得を適用除外と定めた趣旨を、親がローン控除(最長10年間)受けた後に、生計一の息子が住宅を親から買い取って再度、ローン控除を受けることを防ぐためと考えると、適用除外の範囲を既存住宅(中古住宅)と土地に限定した法の趣旨が理解できよう。

参照条文)平成30年3月6日現在
租税特別措置法
(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)
第四十一条
第一項
(前略)住宅の用に供する家屋で政令で定めるもの新築若しくは居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは建築後使用されたことのある家屋で政令で定めるもの(以下「既存住宅」という。)の取得(配偶者その他その者と特別の関係がある者からの取得で政令で定めるもの及び贈与によるものを除く。)をして、(中略)その年分の所得税の額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する。

租税特別措置法施行令
第二十六条
第三項
法第四十一条に規定する政令で定める取得は、同項に規定する既存住宅・・・住宅の取得等とともにする当該件宅の取得等に係る家屋の敷地の用に供される土地等の取得で次に掲げる者(その取得の時において居住者と生計を一にしており、その取得後も引き続き当該居住者と生計を一にする者に限る。)からの取得とする。
一 当該居住者の親族
二 当該居住者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
三 前二号に掲げる者以外の者で当該居住者から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
四 前三号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族