税理士」タグアーカイブ

相続税の申告が必要かどうか。

まずは相続税がかかるかどうかの確認を
亡くなった方の残した財産が、相続税の非課税枠を超えていたら、10ヶ月以内に相続税の申告書を作成し、税務署に提出しなければなりません。合わせて相続税の納付も必要となります。

(相続税の基本的な手順のポイント)
(1) 相続財産の評価
亡くなった方の残した財産について調べ、その財産が相続税の決まりに基づくといくらなのかを、財産ごとに計算しましょう。
(2) 相続税の計算
(1)の評価額の合計額が、相続税の非課税枠(基礎控除額)を超える場合には、相続税の申告と納税が必要です。税務署が、相続税がかかるかどうかを判断し、書類を送ってくれるわけではありません。まずは、自分自身で、相続税がかかるかどうか確認してみましょう。
(3) 申告書の作成・納税
相続税の申告書は、財産を相続した人全員が共同で提出するのが一般的です。税理士に依頼せずに自分で作成しても構いませんが、計算間違いや申告漏れがあると、税務調査を受け、加算税などのペナルティーを課されることになります。また、相続税には、課税価格の減額や税額控除など、税金が安くなる特例がいくつかあります。これらの特例を受けるには、色々な要件がありますので、注意が必要です。

税務署からの「相続についてのお尋ね」の意味とは?
人が死亡した場合、その情報は税務署にも入ります。税務署は、相続税の申告が必要であろうと判断した方に対して、「相続についてのお尋ね」が送られてきます。相続税の申告が必要なのか、不要なのかは、計算してみなければわかりません。それは税務署も同じですので、お尋ねをしてきます。もし、相続税の申告が不要であれば、このお尋ねに必要事項を記入して税務署に提出すれば終了です。

相続税の基礎控除額(非課税枠)とは?
相続税には、財産がこの金額以下なら相続税はかからないという非課税枠(基礎控除額)があります。財産が基礎控除額を超えている場合には、相続税の申告や納税が必要となりますが、これに満たなければ、相続税に関する手続きは一切必要ありません。
基礎控除額は、3000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。

生前贈与が相続税に影響することがある
相続税は亡くなる時に、贈与税は生きている間に、無償で財産を受け取るとかかる税金です。相続税法の中に「相続税」と「贈与税」が定められています。贈与税は、あくまで相続税を補うための税金なのです。
そのため、亡くなる時期に比較的近い3年以内の生前贈与については、相続税で計算し直すことになっています。年間110万円以内の贈与は贈与税がかかりませんので、相続税対策として行われますが、贈与を行った日から3年以内に相続が発生した場合には、贈与した財産にも相続税がかかってきますので、結果として相続税対策にはならなかったことになります。相続税対策は、早い時期から取り掛かる必要があります。
なお、3年以内の生前贈与は、相続税で計算し直すと書きましたが、これは相続人が受けた贈与に限ります。従いまして、相続人でないお孫さん等への贈与は、相続開始前3年以内の贈与であっても相続税には影響を与えません。

サラリーマン等が不動産を売却した場合に所得税の確定申告が必要か否か?

(概要)
・売却による利益が20万円以下であれば、申告不要
・申告不要の場合にも、後日、税務署から「譲渡内容のお尋ね」が届くことがあるが、必要事項を記入して返信すれば足りる。

(詳細)
売却による利益が20万円以下であれば、申告不要
通常は、確定申告に縁のないサラリーマンや年金受給者が不動産を売却した場合、どのような場合に申告が必要なのでしょうか?
売却による利益が20万円以下であれば、申告は不要です。
では利益はどうやって計算するのでしょうか?
売買金額-(取得価額+譲渡費用)=利益

取得価額・・・
土地を買った時の金額
建物を買ったときの金額から時の経過による償却分を控除した金額(年々、減少します)
上記の金額が不明な場合(代々相続してきた土地など)は、売買金額の5%

譲渡費用・・・
仲介手数料など

要するに買った金額が分かっている不動産で明らかに損をしている場合は、申告の必要はありません。

また、居住用財産を譲渡した場合には、その利益から3000万円控除できる、要するに利益3000万円までは税金がかからないという制度がありますが、このような特例を適用する場合には必ず申告が必要です。申告の結果、税金を支払う必要はなくとも、申告する必要がありますのでお忘れなく。

税務署からの「お尋ね」の意味とは?
不動産を売却した場合、その登記情報は税務署にも入ります。税務署は、譲渡所得の申告が必要であろうと判断した方に対して、「譲渡内容についてのお尋ね」が送られてきます。譲渡所得の申告が必要なのか、不要なのかは、計算してみなければわかりません。それは税務署も同じですので、お尋ねをしてきます。もし、譲渡所得の申告が不要であれば、このお尋ねに必要事項を記入して税務署に提出すれば終了です。

提出した申告書の控えを紛失したとき(個人向け)

<要約>
過去の申告書の控えを紛失してしまった場合などには、税務署のサービス・手続きが利用できる。

<詳細>
過去の申告書の控えを紛失してしまった場合などには、税務署のサービス・手続きを利用することが可能である。
具体的には、(1)申告書等の閲覧サービス(閲覧のみ)、(2)開示請求の手続き(複写)の二つがある。
本人が税務署に赴けば問題ないが、本人以外が手続きする際には、下記のように取り扱われる。
1.閲覧については、代理人(だだし親族、税理士等のみ)が、申請可能
2.開示請求(複写)については、マイナンバーの記載のない個人の申告書については、代理人は認められないが、平成28年分以降の申告書でマイナンバーの記載のある申告書については、代理人(親族や税理士以外でも可)が申請可能

なお、どちらの手続きも、代理人の場合は、実印の押印のある委任状と印鑑証明書が必要となる。
なお、開示請求については、本人が郵送で申請することができるが、住民票が必要となる。
https://www.nta.go.jp/sonota/sonota/kojinjoho/tetsuzuki/03.htm

 

被合併法人の電子申告・届出における各種番号

(要約)
以下の通り指導されている模様(2021年12月7日現在)
税務署      合併法人の利用者識別番号(etax)・法人番号等
静岡県財務事務所 どちらでもよい。
浜松市市民税課  被合併法人の利用者ID(eltax)・法人番号等

(税務署詳細)
被合併法人の利用者識別番号は、合併の届け出を行うことによって廃止されるが、当該法人の最終の確定申告を電子申告するにあたっては、国税庁の正式なアナウンスメントはないが、税務署では、合併法人の利用者識別番号を用いることを指導している模様である。
また、申告書に記載する法人番号や、税務署番号・整理番号が記載された納付書についても、被合併法人ではなく合併法人のものを用いることが指導されている模様である。

(県財務事務所詳細)
静岡県では、どの法人の申告・届出かわかるようであればどちらでもよいと指導されている模様である。

 

役員借入金を免除させるのではなく、役員借入金を返済させていく方がお得?

<要旨>
・経営改善計画等において、財政状態の改善あるいは経営責任の履行のために、役員借入金の免除(放棄)を受けることがあるが、DIP(経営者が継続関与する)タイプの計画においては、役員借入金の免除を受けず、役員報酬の支給の代わりに役員借入金を返済することにした方が、金融機関にとっても経済合理性が高い場合がある。

<詳細>
経営改善等計画の立案時においては、財政状態の改善あるいは経営責任の履行のために、役員借入金の免除(役員から会社への貸付金の放棄)を計画することがある。
このとき、多額の役員借入金の免除であっても、税務上の繰越欠損金(法的整理あるいはそれに準ずる場合には、期限期限切れ欠損金を含む)が十分にある場合には、法人のタックスプランニングに影響を与えないことをもって税務上のリスクがないと判断することが多いと思う。
しかし、その後の社会保険料や役員個人に課される所得税等を考慮すると、その判断は今一度検討したいところである。
なぜなら、計画期間中の役員に対する支出を最低限に抑える計画の場合、手取りを基準に計算することになるが、役員借入金の返済と異なり、役員報酬として支払う場合には、当該報酬に対する社会保険料や所得税を上乗せして報酬額を計算する必要があるからである。他方、役員借入金の返済として支出するのであれば、原則として、社会保険料及び個人に対する所得税は発生しないことになる。
特に、前稿「経営における社会保険料認識の重要性」に記したように法人に対する社会保険の加入を当然の前提にすべきことになった昨今においては、報酬額面の約30%にも上る社会保険料の負担は無視できないであろう。
計画期間中の無計画な資金流出を防ぐためにも、計画立案時に、役員報酬の支給の代わりに役員借入金を返済することとするか、経営者と金融機関とのコミュニケーションを深めて頂くよう、私どもとしても提案して参りたい。

 

弥生PAP会員ゴールド認定証頂きました。


私たちの会計事務所では、いくつかの会計ソフトの中からお客様に最適と考えられるものを活用頂いておりますが、この中で使い勝手の良い安価な会計ソフトとして、多くのお客様に”弥生会計”を活用頂いております。今般、この"弥生会計"の提供会社より、ゴールド会員として認定頂きましたのでご報告致します。同認定は、弥生会計を扱う静岡県内107事務所のうち、弊事務所を含む5つの事務所のみが対象となりました。

今後とも、経営者の皆様のお役に立つ事務所を目指して参ります。

『捨てられる銀行』を浜松にて読む その2


<本投稿の要約>

・『捨てられる銀行』では、子会社のサービサーに20代の行員を毎年送りこんでいる地域銀行が紹介されている。

・事業再生への取組み経験を、金融機関の標準的なキャリアプランに入れることは、有用と思われる。

<詳細>

前回の投稿で、様々な示唆に富むと、橋本卓典『捨てられる銀行』(2016年講談社、以下「前掲書」と記す)を紹介しましたが、勉強になった点を追加で書いていきたいと思います。

前回は、地域の中核企業と協力する広島銀行に触れさせていただきましたが、今回は、その子会社の「しまなみサービサー」(しまなみ債権回収株式会社)に関してです。サービサーというのは、経営が困難になった先の債権を銀行から切り離して、回収・管理する機関のことを一般的に指しますが、このしまなみサービサーでは、銀行から「単に債権を売却して終わりという一方通行の関係ではない。可能な場合には、金融機関が再び融資できる状態まで事業再生を手掛けるノウハウと体制を整えている」(前掲書90頁)とされています。この点は昨今のサービサーでは既に珍しくないのかもしれませんが、設立後、「十数年を経過しても20代の行員が毎年送り込まれている。平均年齢は40台前半」(前掲書91頁)という点は、「多くのサービサーは定年後の行員の出向先となっている」(前掲書91頁)中では、「異例」でしょう。

では、なぜ、このようなことができるかというと、同書では、「若い行員が債権回収だけでなく、事業再生という経験を積んで、銀行に戻っていく。この流れが投資銀行ビジネスの強化につながる好循環をもたらしていくことになる」(前掲書91頁)からだとしています。

しかし、事業再生の経験は、投資銀行ビジネスの強化につながるだけではないはずで、例えば、信用保証制度や金検マニュアル偏重によって喪失したと同書がいうところの融資の「目利き力」を鍛えるからこそ、人事戦略上重視すべきなのだと思います。

例えば、現在、「事業性評価」に基づく融資等の促進が求められています(参考:金融庁パンフレット「円滑な資金供給の促進に向けて」)が、企業訪問や経営相談等を通じて、事業の内容や成長可能性から融資を判断するということは、反面で、同種の情報から、融資しない判断も下せるということでもあり、それは、回収できなかった先を、不可抗力ともいえる外部環境の変化によるものか、そうでないといえる部分もあったのか等、深く知ることではじめて可能になると思われるからです。

また、成長力のある企業も、外部環境の変化によって、一時的な苦境に立たされるときもあると思います。そうした時に、事業再生におけるノウハウと経験が活きるとすれば、事業性のある事業者とのリレーションを深めることができ、それは、営業力の向上につながるとも言えるのではないでしょうか。

事業性のある事業者を育てる地域金融がより促進されることを祈っています。

 

 

『捨てられる銀行』を浜松にて読む その1

<本投稿の要約>

・地域金融機関は、直接融資を行っていなくとも、地域の中核企業とコミュニケーションを取ることが重要ではないか。

・地域金融機関がコミュニケーションを深める手法の一つとして、当該企業の株式の取得は考えられないか。

・地域金融機関のそうしたコミュニケーションが、当該企業の長期的成長のシグナルと考えられる場合には、当該投資について機関投資家と地域金融機関が協力する余地はないか。

<詳細>

少し前に話題となった、橋本卓典『捨てられる銀行』(2016年講談社、以下「前掲書」と記す)を遅まきながら読ませていただきました。いろいろ示唆に富む書かと思いますが、まず、勉強になったのが、地域金融機関と地域の中核企業との協力です。

金融庁「金融仲介の改善に向けた検討会議」に関連して広島銀行の取組みを紹介していますが、「広島銀行はマツダと連携し、的確な『処方箋』を与えることができるようになった。」(前掲書48頁)とあります。つまり、「マツダにとって代替のきかない技術をもったサプライヤーであるならば、たとえ財務内容が厳しくても、経営再建まで踏み込んで必ず支えなければならない」ことから、広島銀行は、マツダと連携し、「対象企業を『技術』と『財務』の両面の優劣で評価する」ことができるようにしたとのことです。

融資先を、技術と財務の両面で優劣を単に評価するだけでなく、その取引先の地域的中核である「マツダと連携」するという点は、地域活性化に対する同行の本気を感じるとともに、実際に当事者及び地域の長期的成長にとって有益と考えられます。

これを浜松に置き換えて考えると、自動車産業だけでなく、光関連などの製造業の分野で応用も可能かもしれません。

ただし、「代替のきかない技術」かどうかを峻別するような企業秘密にかかわる情報を、どうやってそうした中核企業から引き出すか、そこは課題かもしれません。もし直接の融資取引がない先だとしたら、なおさらです。

それに対しては、地域金融機関は、当該企業の株式の一部に投資し、中核企業との関係をより強固なものとし協力を得ていくという解決があるかもしれません。

また、もし預金取扱金融機関だけで、株式に直接投資することに懸念があるということであれば、当該地域外の機関投資家と協力するということも考えられます。なぜなら、地域金融機関のそうしたコミュニケーションが、当該企業の長期的成長のシグナルと考えられる場合には、機関投資家にとっても、新たな収益機会と考えられるからです。

各地の地域金融機関と中核企業が協力して、地域経済を活性化していくことを願っています。